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東京高等裁判所 昭和37年(ネ)1409号 判決 1963年2月27日

控訴人 矢田樟次

被控訴人 品川税務署長 外一名

訴訟代理人 真鍋薫 外五名

主文

本件各控訴を棄却する。

控訴費用は、控訴人の負担とする。

事  実 <省略>

理由

当裁判所は、被控訴人品川税務署長に対する本件訴は不適法として却下すべきであり、被控訴人豊島税務署長に対する本訴請求はいずれも理由がないとしてこれを棄却すべきものと判断する。その理由は、次に附加するほかは、原判決理由の説示と同一であるから、右理由の記載をここに引用する。

一、東京国税局長の審査決定の書面が書留郵便に付され、昭和三十六年二月二十二日控訴人の住居に配達ずみであると認めるべきことは上記引用の原判決理由記載のとおりであつて、右書面が控訴人の住居に配達された以上、右審査の決定に係る通知は控訴人の了知し得べき状態に置かれたものというべきであり、決定の通知はこのようにこれを受くべき者の了知し得べき状態に置かれた時に効力を生ずるものと解すべく、右書面が何らかの理由でたまたま控訴人自身の入手するところとならず、ために控訴人において右審査決定のあつたことを知らなかつたとしても右通知の効力には影響がないものとすべきであるから、本訴の出訴期間は前記配達の日から起算されるべきである。

二、本件滞納処分は被控訴人品川税務署長のなした賦課処分(更正決定)により認定された控訴人に対する租税の徴収のために行われたものであること及び右賦課処分はこれに対する出訴期間の徒過によつて形式的に確定したと認めるべきことは、いずれも上記引用に係る原判決の認定したとおりであるから、右賦課処分に重大かつ明白な瑕疵のあることの主張立証のない本件では、右賦課処分により認定された控訴人の租税債務はもはやこれを争うことはできなくなつたものというべきである。国税徴収法第百六十六条及び第百六十九条の規定をもつて、租税債務の不存在を理由として常に滞納処分の瑕疵の主張を許す旨を規定したものと解することはできない。従つて控訴人に差押に係る租税債務の存しないことを理由とする被控訴人豊島税務署長に対する本訴請求は失当とすべきである。

以上のとおりであつて、右と同趣旨の原判決は相当であるから、民事訴訟法第三百八十四条、第九十五条、第八十九条に従い、主文のとおり判決する。

(裁判官 小沢文雄 中田秀慧 賀集唱)

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